『Museum:Zero Hour』

PortB 9月15日・16日

J.L.ボルヘスと都市の記憶

 本作品は、アルゼンチンの詩人J.L.ボルヘスを出発点としている。だが、この作品の意図は、ボルヘスのある作品を形象化することではなく、むしろ「ボルヘスという身振り」を取り上げることにある。ボルヘスの身振り、例えば、それは積み重なった時間の層の中で、忘れられたもの、捨て去られたもの、取るに足らないものを収集し、分類する身振りである。ボルヘスの、あり得ない出会いを促す分類の手付きによって、基底となるタブローそのものが狂わされ、時空間は変容し、私たちは迷子の感覚を味わう。「ある都市で道が分からないということは、大したことではない。だが、森のなかで道に迷うように都市のなかで道に迷うには、修練を要する。」W.ベンヤミンが「ベルリンの幼年時代」で語っていたこんな体験へと、ボルヘスは私たちを導いてくれる。
 他方でこの作品は、東京周辺のとある街としての高島平へのフィールドワークを軸としている。かつては延々と広がる原っぱだった徳丸ヶ原、そこに屹立する現在の高層団地群、またそれを取り囲むようにある街道筋由来の多くの旧跡・・・
 J.L.ボルヘスと高島平。このどうやっても出会いそうにない二つをぶつけてみる。そこに何が生まれるのか。問題となるのは「都市の記憶」、あるいはそこに内在する「死」であろう。高島平という「地層」を発掘するなかで、また住民の方々との幸運な出会いのなかで、私たちもまた、とるに足らないもの、捨て去られたもの、虐げられたものの収集に努めた。東京という都市の一郭に眠る記憶の地層が、どんな形をとって現れ、私たちを迷子にするのだろうか。
 記憶への旅。Museum: Zero Hourへようこそ。


スタッフ
  構成・演出:高山明
ドラマトゥルク:平田栄一朗
舞台監督・照明:清水義幸
   技術監督:井上達夫
音源採集・音響:原田健太郎
映像・宣伝美術:三行英登
     衣装:井上さかえ
   リサーチ:Port B
     制作:制作オフィスPortA企画
     協力:田原菜穂子
        粂川麻里生
        シアターΧ
キャスト
青木純一
暁子猫
井上達夫
小口美緒
ヤオ・タテキ


特別出演
高島平在住の方々
公演日程

2004年9月15日・16日
  15(水) 16(木)
15:00
19:30
※開場時間は30分前
チケット
前売:3,000円
当日:3,500円
学生前売:2,000円
学生当日:2,500円
(全席自由)
問い合わせ
制作オフィスProtA企画
〒333-0857埼玉県川口市小谷場1195-1-302
Tel・Fax:048-269-4679
E-mail:porta_kikaku@hotmail.com
Website:http://portb.zone.ne.jp
シアターXトップ|[戻る]