「物語シアター」創立20周年を迎えて

2005年に「物語シアター」と命名して立ち上げたのは、その前年に拉致被害者で高校同窓生蓮池薫君のために、東京と新潟で朗読会を4回にわたって行ったことがキッカケでした。 その朗読会の間に、彼の子供たちが日本に帰ってくることになったのです。奇跡だと思いました。 そのことで、声と言葉の持つ可能性を強く認識するに至り、朗読劇「物語シアター」を立ち上げようと決意しました。

それ以来、コロナ時を除いて、高い頻度で舞台公演を行ってきました。 これからご紹介する東京都内での自主公演をメインとして、様々な依頼公演や、学校での朗読公演等々。 東京や地方での公演回数は何百の単位となり、レパートリーも百本近くにも増えました。 気がつけば20年。今回は、これまでの総決算と位置づけ、自分が一番好きな作家である浅田次郎の二編を選び上演いたします。

「月島慕情」は、情感あふれる浅田ワールドの真骨頂。 ヒロインにこだま愛を迎え、吉原に生きる花魁の悲しさと矜持を描きます。 また、「特別な一日」では、予測不可能な現代社会に警鐘を鳴らした問題作。 最後に予想もしない結末が待っています。カギを握る主人公の妻として、フジテレビの人気アナウンサー西山喜久恵が初出演します。 「物語シアター」のワクワクするような面白さに浸っていただけることでしょう。

堀井真吾