昭和22年秋、大戦の傷も癒えぬ、横浜日の出町。 潮風に向かい、道なき道を疾走する浮浪児の群れのなか、 焼けビルに沈む、どん底ホテルに、一人の老人が、荷を解いた。

舞台は、戦後の傷も癒えぬ横浜で、焼けビルを不法占拠している在日三国人と、その女房上海帰りの滝代が、その地下に木賃宿、どん底ホテルを開いていた。
そこに棲み集う人間は戦後復興の風に馴染めぬ、小ヤクザ、街娼、アル中、役者、泥棒、落ちぶれた華族、等。彼らは、明日をものぞまぬ日常を無為に過ごしていた。
そんなある日、女将の可憐な妹、道代が、巡礼姿の老人を、どん底ホテルに連れて来る。
M.ゴーリキィーのどん底を、ほぼ忠実に、戦後横浜日の出町に焼き直したネガティブ人間賛歌…。