オペラを観に行こう、と思っていらしたかたは、ちょっと驚くかもしれません。なぜならそこには一つのベンチしか舞台装置がなく、照明も地明かりのまま、出演者は全員ジャージ上下を着用──というのですから。
でもちゃんと「オペラ」なのです。
道具にも照明にも衣裳にも頼らず、出演者の肉体と歌だけで、楽しいオペラの世界をストレートに、目の前に作り出します。昨年、二期会WEEK＠サントリーホールで大好評を博したこの試み、シアターΧに登場です。

あらすじ

「跡継ぎを決めて家をいつまでも栄えさせたい」と夢見る老富豪、ドン・パスクァーレ。
「恋人ノリーナとの結婚をパスクァーレ伯父さんに認めてもらいたい」と夢見る彼の甥、エルネスト。
ならばエルネストとノリーナを夫婦にしてその二人に家を継がせれば万事円満──となりそうなところですが、頑固で古風なドン・パスクァーレは、ノリーナが身分も財産もない未亡人であることを理由に、決して認めようとしません。挙げ句に、ならばいっそ自分が結婚して跡継ぎを作ろう！と夢を無謀に膨らませる始末。
友達であるドン・パスクァーレと、親友のエルネスト、両方の夢を知ったマラテスタが採った策は、ある「貞淑な女性」をパスクァーレに紹介することでした。
紹介って誰を？　そして、親友・エルネストを見捨てるの？　いやいや、そうではありませんでした……。