
劇団クセックACT
『ドン・キホーテ』狂気を演じ続けて
2025年11月19日(水)
劇団クセックACT 2025 劇団解散さよなら東京公演
『ドン・キホーテ』前編の小説構造は実に「雑」です。ドン・キホーテとサンチョ・パンサの冒険譚以外に、羊飼いの娘マルセーラに振られたグリソストモの失恋物語、突如として語り始められる「愚かなもの好きの話」、フェルナンドのドロテアへの恋の誑かし、幼いルシンダとカルデニオの純愛、「捕虜の身の上話」、ルイスとクララの拙い恋物語、レアンドロがビセンテに騙される結婚詐欺など、種々雑多な話が詰め込まれています。後編を書くにあたりセルバンテスはこういった挿話を省き、ドン・キホーテとサンチョの二人を主人公にして物語を展開しており、前編のドン・キホーテと後編のドン・キホーとではまったく違う人物のように思えます。ズバリ言えば、後編は読者から期待されるドン・キホーテを主人公に据えて、人から狂っているといわれる頭脳で、彼の騎士道論(正義とは何か、何をもって正義というか)、歴史論(歴史とは物語りなのか事実なのか)など、明晰な思索を語りたいだけ語らせています。もしかしたら、それは、主人公に同化した作者セルバンテス自身の思考なのかもしれません。そういう点から逆説的にみてみると、セルバンテスは前編では自分が期待していないドン・キホーテから書き始めたので、荒唐無稽な冒険談を存分に書けたのかもしれません。ただ首尾一貫しているのは、ドン・キホーテの「狂気」です。そして、この本を読み進めていくうちに、「あの人はおかしい、狂っている」という人は「実はおかしくないのか、本当は狂っていないのか」、その人こそ「おかしいのではないか、狂っているのではないか」と思わせる仕掛けに、我々はまんまと嵌ってしまいます。ところで、あなたはどちらでしょうか?
劇団クセックACTとは
1980年の旗揚げ以来、スペインの作家を中心に、日本人特有の肉体性と言葉表現によって、「動く絵画」と呼ばれるオリジナリティ豊かな舞台をつくりあげてきました。2002年からスペインのアルマグロ国際古典演劇祭より招聘を受け、『人生は夢』『ドン・キホーテ』『ヌマンシア』『ラ・セレスティーナ』『フエンテオベフーナ』などを上演してきました。2006年にはカサ・アシアから招待を受け、バルセロナ、マドリード、アルカラ・デ・エナレスで『ドン・ペルリンプリンの恋』を上演。2008年3月にはムルシア、アルメリーアの各演劇祭で『ヌマンシア』を上演。さらに同年7月、翌2009年と、アルマグロ国際古典演劇祭とオルメド古典演劇祭で『ラ・セレスティーナ』『フエンテオベフーナ』公演。2014年もオルメド古典演劇祭に招聘され、『オルメドの騎士』を上演。ガルシア・ロルカの前衛劇『観客』をマドリードとムルシアで公演し、絶賛を浴びました。パンデミックが終わってから、2024年には『ドン・フアン〜セビーリャの色事師と石の客人』を名古屋とアルマグロ国際古典演劇祭にて公演しました。
『平成9年度愛知県芸術文化選奨』『平成20年度名古屋市芸術奨励賞』『平成27年度名古屋演劇ペンクラブ賞』受賞
*劇団クセックACTは2025年度の名古屋公演を最後に、1980年の設立以来、45年間の活動に終止符を打ちました。
スタッフ
原作 | : | ミゲル・デ・セルバンテス |
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翻訳・構成・脚本 | : | 田尻陽一 |
構成・演出・舞台美術 | : | 神宮寺啓 |
舞台監督 | : | 鈴木寛史 |
音響 | : | 田中徹 |
照明 | : | 花植厚美 |
衣装 | : | まさきよしこ |
制作 | : | 劇団クセックACT |
キャスト
榊原忠美 吉田憲司
平井智子 大崎勇人
加藤由以子 清水絵理子
山田吉輝 鈴村一也
川瀬結貴 今枝千恵子
斉藤弥生 吉川統貴
安部火韻
公演日程
2025年11月19日(水)18:00
※開場は開演の30分前。
チケット
4,000円
(完全予約制)
[チケット申込]
劇団クセックACT
問い合わせ
劇団クセックACT
TEL:090-4119-2215
Webサイト:http://www.ksec-act.com